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『カレントアウェアネス』307号掲載 | カレントアウェアネス・ポータル

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(1)

カレント

アウェアネス

Current Awareness

目  次

[CA1735]図書館員のIT知識とその向上−ITと向き合うために / 林 賢紀…… 2

[CA1736]Shibboleth認証で変わる学術情報アクセス

/ 野田英明, 吉田幸苗, 井上敏宏, 片岡 真, 阿蘓品治夫…… 4

[CA1737]米国の図書館就職事情

/ 田中あずさ…… 7

[CA1738]ニュージーランド国立図書館のデジタル文化遺産アーカイブプロジェクト

/ 岡本常将…… 10

[CA1739]トルコの司書職制と図書館情報学教育

/ 林 瞬介…… 12

動向レビュー

[CA1740]著者の名寄せと研究者識別子ORCID

/ 蔵川 圭…… 15

[CA1741]人文学研究と電子アーカイブ

/ 神崎正英…… 19

[CA1742]ライブラリー・グッズの可能性

−ミュージアム、米・英の国立図書館の事例を通して

/ 渡辺由利子…… 23

編集・発行/国立国会図書館 関西館 図書館協力課 〒619−0287 京都府相楽郡精華町精華台8−1−3 TEL:(0774)98−1448 季刊/ 3月・6月・9月・12月 各20日発行   ・本誌は、メールマガジン「カレントアウェアネス-E」<http://current.ndl.go.jp/cae> と連携を図りながら、 図書館及び図書館情報学における、国内外の近年の動向及びトピックスを解説する情報誌です。 ・本誌の全文は、「カレントアウェアネス・ポータル」<http://current.ndl.go.jp/ca> でもご覧いただけます。 ・本誌の掲載記事を長文にわたり抜すいして転載される場合には、事前に図書館協力課に連絡してください。

No.307

2011.3.20

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CA1735 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

図書館員の IT 知識とその向上

− IT と向き合うために

1. 背景と現状  IT を活用したサービスや業務は図書館において 欠 か せ な い も の と な っ て い る。 例 え ば、2010 年 に は大学図書館、公共図書館共に 80%以上がウェブで OPAC を公開している(1)(2)。特に、公共図書館にお ける蔵書検索や貸出予約等のサービスは、電子行政 推進の一環(3) として 2009 年度において約 68%と 7 割 近くの地方自治体でオンライン化が進められている。 このように、多くの図書館で業務の全般が電子化さ れている(4) 。  それでは、オンラインサービスを支える人材であ る図書館員の現状はどうか。日本図書館協会情報シ ステム研究会の委託を受けて三菱総合研究所が実施 した「図書館システムの現状に関するアンケート」 (2010 年 8 月)(5) においては、「図書館システムの現状」 としてシステムの専任担当者は少数で、専門家の支 援も得られていない。また必要な人材育成も体系的 に行われていない実態が明らかにされている。  また、文部科学省の「これからの図書館の在り方 検討協力者会議」(6)で 2009 年 2 月に取りまとめられ た「司書資格取得のために大学において履修すべき 図書館に関する科目の在り方について(報告)」(7) で は、「急速に進行する情報化に対応するために、図書 館の業務やサービスの基礎となる情報技術の知識や 技術の向上が必要であり、そのための科目を設ける 必要がある。」として、IT 知識を向上させることも 司書養成の課程に必要であることが指摘されている。  このように、図書館サービスのオンライン化、電 子化は進んでいるが、図書館員が実際にサービスを 構築するために必要な知識や技能を育成する体制は、 もっとも基礎的な講習である司書課程でさえ不十分 で、現状では整備されていないといえる。 2. なぜ IT 知識が図書館員に必要なのか 2.1 業務に必要なツールを自分たちで作ること  いかにして IT 知識を身につけ図書館サービスを構 築するのか、澤田氏はこの専門家であるシステムズ ライブラリアン(Systems Librarian)を例に取り、「シ ステムズライブラリアンに期待されているのは、情 報システムと図書館の業務を同じ俎上で論じること である」と論じている(CA1634 参照)。  情報システムと図書館業務の歩みを振り返ってみ よう。  情報システムは進化を続けている。パンチカード でのデータの入出力に始まり、これにマイクロフィ ルムを組み合わせて検索可能とすることを目指した memex の構想、次いで磁気テープに記録された情報 検索が可能になり、専用線で接続しての利用からオ ンラインネットワークとその進化形であるインター ネットの形成に至る。  図書館業務に必要なツールは誰が、どのようにし て築き上げてきたのであろうか。例えば、資料の組 織化のため書誌の記述方法や記述内容を体系立てて 目録規則として整備し、維持を行ったのは図書館員 ではなかったのか。冊子体の目録を検索しやすく編 集する、75mm × 125mm のカード目録に書誌情報を 過不足なく記述するために工夫を凝らす、など情報 へのアクセスポイントの整備を続けてきたのもまた 図書館員ではないか。  いずれも、その時々の最新技術を用いて情報の組 織化や検索を可能とするための先人の努力であり、 目指すところは近い。だからこそ、現在では IT と図 書館はその距離を縮めることが可能となり、同じ俎 上で議論することができるのではないだろうか。 2.2 情報サービスと図書館員  かつては、図書館員の業務は IT とは無縁の、異 な る も の と す る 考 え 方 も あ っ た。 米 国 で Yahoo!、 AltaVista、Inktomi、Excite などがディレクトリ作成、 検索とインデックスの高度化により「Web を組織化 する」ためにしのぎを削っていた 1996 年(8) 、日本で は「電子図書館ができたら、私たちの仕事がなくな るのでは」と不安に陥る図書館員や、「(情報の評価 の面で)インターネットの問題は別次元」と看過す るサーチャーも少なくなかった(9) 。2007 年 10 月に国 立国会図書館デジタルアーカイブポータル(PORTA) が 多 く の API(Application Program Interface) を 実装して正式公開され(CA1596、E706 参照)、図書 館員が新たなサービスとして PORTA がどのように 展開するかを期待した約 2 年半後の 2010 年 3 月、図 書館とは関係のない民間企業 Nota Inc. が全国の公共 図書館の横断検索を行うサービス「カーリル」(10) をわ ずか 4 人で、2 か月の期間で構築した(E1035 参照)。 彼我の差は大きいようにも見える。  しかし、近年になりようやく図書館員は情報シス テムを同じ俎上に上げようとしている。Blog、RSS、 SNS、Twitter など、インターネットに様々なサー ビスが登場する一方で、その技術をツールとして自 館のサービスに取り入れる図書館もある(CA1565、 CA1716 参照)。また、オープンソースの図書館シス テムを構築するために図書館員が参加した Project Next-L(CA1629 参照)や、「ICT に明るく強いライ

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ブラリアンを全国の図書館に広げる」ことを目的と して誕生した Code4Lib JAPAN(11)(12) による実践的な ワークショップ(13)(14) からは、積極的に IT と対峙し 我がものにしようとする姿勢が感じられる。 2.3 サービスを知り、内容を学び、実践する  かつてのように、必要なツールを図書館員自身が 作り図書館サービスを向上させるためにこそ、図書 館員は IT 知識を得る必要がある。この取り組みに 求められるものは、基礎的な知識もさることながら、 インターネット上にはどのようなサービスがあるか を知り、それらを使って何ができるのかを実践で学 び、図書館サービスのツールとしていかに活用でき るのかを考える、この 3 ステップであろう。上述の Code4Lib JAPAN のほか、日本図書館協会の「中堅 職員ステップアップ研修」(15)で行われた「図書館の ウェブ活用−実践編」に見られるような、連絡用メー リングリストに加入し、Blog や Twitter を使った発 表を課すなど、受講する図書館員が主体的に最新の サービスを自ら利活用可能な技能として習得するこ とを目途とした課程がその好例である。  決してインターネット上のサービス群は図書館を 脅かすものではない。上手に扱い図書館サービスの ためのツールとするべきである。同時に、図書館サー ビスはもはや直接に来館する者に限ったものではな く、インターネットを経由して遠隔から、かつ図書 館側が想定しない利用もありえることを意識するこ とも必要だろう。カーリルのようなサービスを図書 館員が成し得ず、また新たな発想で構築されたこと は、OPAC な ど イ ン タ ー ネ ッ ト 上 に 開 か れ た 図 書 館サービスを様々な形で利用したいという潜在的な ニーズの存在を示している。 3. まとめ  図書館員は、資料の内容を完全に理解することが できなくても、概要を把握し適切な分類記号や件名 標目を付与できる。レファレンスで問われた質問に、 意 味 が 完 全 に 分 か ら な く と も 適 切 な レ フ ァ レ ン ス ツールの活用やレフェラルサービスで対応すること で利用者に答えることができる。図書館員がこれら の技能や知識を学び、身につけサービスを行うこと に異論はないだろう。  IT 知識の習得についても同様ではないだろうか。 図書館員であれば、インターネット上のサービスの 概要を掴み、何ができるのかを理解することや、必 要に応じて IT の専門家と協調し知恵を借りることが できるはずだ。  IT のような、一見近づきたくはない、自分とは無 関係と思える知識や技術であっても、サービスのた めのツールであると考えればこれまでの取り組みと 何ら変わることはない。  いかなる技術であっても、「図書館のサービス」で あるからには他人任せにはできないはずだ。もう IT なしには業務は行えない。今こそ、全ての図書館員 が IT 知識を身につけサービスを向上させる時であ る。 (農林水産研究情報総合センター:林 賢紀) ( 1 )上田修一 . 大学図書館 OPAC の動向 . 慶應義塾大学文学部・ 慶應義塾大学大学院文学研究科 図書館・情報学専攻 .   http://www.slis.keio.ac.jp/ ueda/libwww/libwwwstat. html, (参照 2011-01-13).   調査結果は 2010 年 3 月 31 日時点。 ( 2 ) 公共図書館 Web サイトのサービス . 日本図書館協会 .   http://www.jla.or.jp/link/public2.html, (参照 2011-02-03).   調査結果は 2010 年 12 月 27 日時点。 ( 3 )以下において、「図書館の貸出予約等」が「オンライン利用 促進対象手続」の一つとして位置づけられている。    電子自治体オンライン利用促進指針 . 総務省 . 2006-07-28.   http://www.soumu.go.jp/main_content/000076232.pdf, (参 照 2011-01-13). ( 4 ) 地方公共団体における行政情報化の推進状況調査結果 平 成 22 年度資料編 総括資料 第 2 節第 5 表⑥ . 総務省 .   http://www.soumu.go.jp/denshijiti/chousah22.html, ( 参 照 2011-01-13). ( 5 ) 図書館システムに係る現状調査調査結果 . 三菱総合研究 所 . 2010-08-31.   http://www.mri.co.jp/NEWS/press/2010/2021657_1395. html, (参照 2011-01-13). ( 6 ) これからの図書館の在り方検討協力者会議について . 文 部科学省 .    h t t p : / / w w w . m e x t . g o . j p / b _ m e n u / s h i n g i / c h o u s a / shougai/019/index.htm, (参照 2011-01-13). ( 7 )これからの図書館の在り方検討協力者会議 . 司書資格取得 のために大学において履修すべき図書館に関する科目の在 り方について(報告) . 文部科学省 .   http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/ toushin/__icsFiles/afieldfile/2009/09/16/1243331_2.pdf, (参照 2011-01-13). ( 8 )スタインバーグ , スティーヴ G. 検索エンジン大系、思想と 技術を追え! . 内田勝訳 . ワイアード . 1996, 2(10), p. 42-53, 136-137. ( 9 )原田智子 . 特集 , 第 26 回ドクメンテーション・シンポジウム : パネルディスカッション : 図書館員とサーチャーの生きる 道 . 情報の科学と技術 . 1996, 46(10), p. 543-551. (10)カーリル . http://calil.jp/, (参照 2011-02-04). (11)丸山高弘 . 図書館の未来を予測する最善の方法は,それを創 りだすことだ : Code4Lib JAPAN のコンセプト,ビジョン, ミッション,アクション . 情報管理 . 2011, 53(10), p. 554-563. (12)岡本真 . 「日本の図書館をヤバくする」ために─ Code4Lib JAPAN の経緯、目的、事業、そして Flickr を用いたワー クショップのねらい . ず・ぼん . 2011, (16), p. 98-107. (13)江草由佳 . 第 2 回 Code4Lib JAPAN Workshop「Web の

ログファイルを読む・解析する」(10 月 24 日)(サービス 構築コース)が無事開催されました . Code4Lib JAPAN. 2010-10-25.

  http://d.hatena.ne.jp/josei002-10/20101025/1288003806, (参照 2011-01-21).

   江 草 由 佳 . 第 3 回 Code4Lib JAPAN Workshop 「API は 怖くない!− RSS から API まで便利な仕組みを使い倒そ う」(12 月 12 ∼ 13 日)(サービス構築コース) が無事開催 されました . Code4Lib JAPAN. 2010-12-13.   http://d.hatena.ne.jp/josei002-10/20101213/1292251500, (参照 2011-01-21). (14)Code4Lib JAPAN の第 3 回ワークショップの成果の一つが 以下で公開されている。    調べる・相談する(レファレンス) . 福井県立図書館 .   http://www.library.pref.fukui.jp/reference/reference_top. html, (参照 2011-01-13). (15)2010 年度中堅職員ステップアップ研修(2). 日本図書館協会 .   http://www.jla.or.jp/kenshu/stepup2010-2.html, ( 参 照 2011-02-03).

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CA1736 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

Shibboleth 認証で変わる学術情報アクセス

1. はじめに  現在、大学を始めとする教育・研究機関で提供さ れる電子コンテンツの大半は、出版社などのベンダー と各機関との間でライセンス契約を結んでいるもの で、その認証は、IP アドレスによって行われること が多い。しかし、米国情報標準化機構(NISO)のワー キ ン グ グ ル ー プ で あ る SERU(Shared Electronic Resource Understanding)(1) がガイドラインとして示 したように、一般的に教育機関に所属する学生、教 職員等のユーザは、キャンパス外からでもこうした ライセンスリソースへのアクセスが認められるよう になってきている。これを技術的に実現するために、 VPN(2)や、リバースプロキシ(3)などが用いられてき た。なかでも EZproxy(4)は、ユーザ側が特別なソフ トウェアをインストールすることなく、ユーザ ID / パスワードによりアクセスできること、また電子コ ンテンツへのアクセスに特化しており、利用者コミュ ニティが充実していることなどから、図書館で広く 使われてきた。   こ の よ う な 状 況 の な か、 最 近、IP ア ド レ ス 認 証 に 代 わ り、 機 関 が 個 人 認 証 を 行 う 技 術 と し て Shibboleth(シボレス)(5)が注目を集めている。IP ア ドレスによる認証が、キャンパスという「物理的な 場所」に基づいて認可を行うのに対し、Shibboleth による認証は、アクセスする利用者の「属性」(所 属部局、教員/学生など)に基づいた認可を実現し ている。また、キャンパスの内外を意識することな く各サービスへアクセスできること、シングルサイ ンオン(SSO)、パーソナル機能との連携、ユーザ管 理の利便性向上などのメリットもある。さらに、ラ イセンスリソースへのアクセス認証管理を一元化す るため、英米を始めとする世界各国で、国レベルの Shibboleth フェデレーションを運用する動きが広が りを見せており、日本でも国立情報学研究所(NII) を中心とした「学術認証フェデレーション」(学認: GakuNin) が 立 ち 上 が っ て い る(6) 。 ま た、GakuNin の運用を行うため、NII と大学関係者により、「学認 タスクフォース」が立ち上がっており、筆者らは図 書館関係者としてこのタスクフォースに参加してい る。本稿では、Shibboleth について国内外の動向を まとめるとともに、GakuNin の取り組みを紹介する。 2. Internet2 の Shibboleth プロジェクトと各国のフェ デレーション  Internet2(7)は、1996 年に米国 34 大学の代表によっ て設立された、ネットワーク技術の発展を目的とし た組織である。現在は、研究者へのツールやサポー トの提供、サイバーインフラによる協力活動といっ た4つの目標を掲げて活動しており、Shibboleth は、 その中で、SSO を前提としたアクセスコントロール を行うためのオープンソースのミドルウェアとして 開発された。2003 年にバージョン 1.0、2008 年にはバー ジョン 2.0 がリリースされ、現在に至っている。  Shibboleth では(広義の)認証プロセスにおける、 本人確認を行う「認証(authentication)」とサービ ス利用の権限を付与する「認可(authorization)」を 分離し、ユーザ認証はサービス利用機関が設置する IdP(Identity Provider)側で、認可はサービス提供 元( ベ ン ダ ー) が 設 置 す る SP(Service Provider) 側で行う(8) 。SP は独自に認証を行わず、IdP から送 信 さ れ る「 属 性(attribute)」 情 報 を 信 頼 し て 利 用 認可を行う。利用機関とベンダーの相互信頼に依存 する認証方式であることから、双方が国や地域を単 位としたフェデレーションと呼ばれる連合組織を結 成し、利用ポリシーの策定や連携に必要なメタデー タ の 集 中 管 理 を 行 う の が 一 般 的 で あ る。Internet2 自 身 も プ ロ ジ ェ ク ト の 一 環 と し て InCommon と い うフェデレーションを組織しており(9) 、また英国情 報システム合同委員会(Joint Information Systems Committee:JISC)も 2008 年に Shibboleth を採用し、 UK-Fed を組織している(10) 。   フ ェ デ レ ー シ ョ ン 間 の 連 携 を 推 進 す る こ と を 目 的 と し て 結 成 さ れ た REFEDs(Research and Education Federations)(11)の調査によると、2010 年 10 月現在、学術情報へのアクセスを主目的とするフェ デレーションは世界中に 27 団体存在している(12) 。こ れらのフェデレーションへ参加している利用機関数 を合計すると、およそ 1,800 にもなる(13)。   各 フ ェ デ レ ー シ ョ ン に お け る サ ー ビ ス の 力 点 は 様々であるが、GakuNin では後述のように各機関が サイトライセンスで購入している電子ジャーナル等 を含む教育・研究用のサービスを充実させようとし ている。 3. 日本における Shibboleth の利用   日 本 に お い て Shibboleth 認 証 を 学 術 情 報 へ の ア クセスに利用する動きは、2008 年 3 月、NII におい て開催された懇談会に始まる。NII の「全国大学共 同電子認証基盤(UPKI)構築事業」の一環として Shibboleth を利用した認証連携基盤の設立が協議さ れ、2008 年度に 27 機関が参画して「UPKI 認証連携 基盤によるシングルサインオン実証実験」が実施さ れた(14)。実証実験でフェデレーションとしての運用

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開始に見通しがついたことから、2009 年度に試行的 なフェデレーションとして「学術認証フェデレーショ ン(UPKI-Fed)」がスタートした。2010 年度からは 愛称を「学認(GakuNin)」に改め、本格運用に移行 している。また情報部門や図書館のスタッフなど、 フェデレーションを構成する機関の実務担当者とし ての立場から GakuNin の運用に参画する、学認タス クフォースが発足している。  国内における取り組みの中で、タスクフォースに 関わり、先行して実際にサービス運用に入るなどし た、いくつかの事例を紹介する。  千葉大学においては、Shibboleth を電子ジャーナ ルへのリモートアクセスを実現するツールと位置付 け、附属図書館が主体となって利用環境を構築した。 研究者の文献利用行動を「図書館目線」で体系化し、 中核となる「電子ジャーナルを読む」ことを中心に、 文献を「検索する」「読む」「管理する」という一連 のプロセスを SSO で実現することを目標としてサー ビスを行っている。システム面では、情報部門であ る総合メディア基盤センターとの連携により、全学 ネットワークやメールシステムを利用するための利 用者情報を格納した LDAP サーバのデータを参照さ せて認証を行っている。また、IdP のハードウェア周 りの管理にも総合メディア基盤センターの協力を得 ている。図書館と情報部門の緊密な連携が重要であ ることは先行フェデレーションである英国などでも 強調されているが、これは日本においても同様であ ろう。   九 州 大 学 で は、 情 報 部 門 で あ る 情 報 統 括 本 部 と 附 属 図 書 館 の 連 携 に よ っ て、IdP の 立 ち 上 げ を 行 い、 図 書 館 の マ イ ア カ ウ ン ト サ ー ビ ス( き ゅ う と MyLibrary)及び電子コンテンツへの自宅・出張先 からのアクセスサービス(どこでもきゅうと)での Shibboleth 認証を実現した(15) 。GakuNin へも正式参 加しており、大学独自のサービスと商用サービスの 双方で、Shibboleth による SSO の実現を目指してい る。  京都大学においては従来から、図書館として提供 している電子リソースへのアクセスの際、ユーザが Web サイトに直接アクセスするのではなく、間にプ ロキシサーバを立て、サーバ上で稼働している Squid と い う フ リ ー ソ フ ト ウ ェ ア に よ り 認 証 を か け て き た。利用統計の取得と、大量ダウンロード等を理由 とするアクセス遮断措置を受けた場合の調査対応の 迅速化のためである。また、学内の電子リソースア クセスを図書館にあるプロキシサーバに集約してい る。このため、ユーザ、IdP、SP 間で通信が成り立 つ Shibboleth 認証を採用することができず、現時点 において、Shibboleth 認証に対応しているのは、プ ロキシを経由させていない CiNii、RefWorks と、図 書館の提供ではない Microsoft DreamSpark のみで ある。今後、この認証プロキシを Shibboleth 対応さ せる事が課題である。 4. 対応サービス拡大への取り組み  Shibboleth 認証が有する利点の一つとして、サービ ス側に送信する利用者の属性情報を IdP の管理者が コントロールできる点が挙げられる。どのような属性 情報をサービス側に送信するかは、サービス利用機関 とベンダーの合意によってフェデレーションごとに定 められており、例えばスイスの SWITCHaai(16)やデン マークの WAYF(17) では、利用者を特定できる情報を 含んだ属性を SP に送信させることにより、e ラーニ ングコンテンツを多機関で共同利用するサービスが 活発に展開されている。一方、英国の UK-Fed やフ ランスの Éducation-Recherche(18) では、認証に必要 な属性情報が比較的少ない、電子ジャーナルをはじ めとする商用の学術コンテンツでの利用が先行して いる。  GakuNin でも学術コンテンツへのアクセスをサー ビスの柱として位置づけている。利用者が Shibboleth の利便性を享受するには対応サービスの拡大が必須 であるが、GakuNin を通じて利用できるサービスは、 2011 年 1 月現在で 19 に留まる。海外のフェデレー ションでもコンテンツの増加を図ることがフェデレー ションの利便性を向上させる伴であることが指摘され ており(19)、例えば InCommon では、対応する学術コ ンテンツを拡大するため、InCommon に参画する個々 の機関が InCommon Library Subgroups(20)

を組織し、 フェデレーションの利益を代表してベンダー各社と交 渉を行っている。GakuNin でも InCommon に範をと り、学認タスクフォースに参加している図書館関係者 によって GakuNin ライブラリーチームを結成し、学 術コンテンツのベンダー各社と Shibboleth 対応の交 渉を行っている。  対応サービスを増加させることは GakuNin の利便 性を向上させる上で重要であり、それにより参加す る学術機関の増加も期待できる。しかし、ベンダー にとっては、提供するサービスを GakuNin に対応さ せるために、金銭的・人的なコストがかかるため、 逆に GakuNin 参加機関の増加等による、メリットが 必要である。このような状況のなか、GakuNin の利 用に関するベストプラクティスを見出し、参加する 学術機関、対応するサービスの双方の増加を促して いくことが、GakuNin ライブラリーチームの使命の 一つであると考えている。

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 このように、GakuNin ライブラリーチームは、現 在 Shibboleth に対応する学術コンテンツの拡大に力 点を置いているが、実際に Shibboleth 認証が適用で きるサービスの可能性は、これに留まらない。金沢 大学や佐賀大学などでは、大学ポータルや教務シス テムなどの学内サービス、ネットワーク利用者認証 システム等での実装が実現されており(21)(22) 、四国地 区の 8 大学で構成される e-Knowledge コンソーシア ム四国(23)では、e ラーニング教材を参加大学が共同 で利用する試みがなされている。Shibboleth が有す る可能性を最大限に発揮し、利用者の利便性を向上 させる取り組みとして、これらの方向からのアプロー チにも期待したい。 5. 国際連携の取り組み  Shibboleth の SP は、1 台のサーバで複数のフェデ レーションに対応できるが、そのためにはフェデレー ションごとの設定を追加していく必要がある。この ため、既に海外のフェデレーションに参加している サービスであっても、ただちに GakuNin で利用でき るとは限らない。そのため、複数のフェデレーショ ンが SP を相互に提供し合う、Inter-Federation の取 り組みも欧州では始まっている(24) が、個人情報保護 をはじめ運用ポリシー面での調整に課題を抱えてい るなど、拡大にもう少し時間を要すると思われる。  こうした運用ポリシーやユーザインターフェース など、各国のフェデレーションに共通する問題点に ついては、各国フェデレーションのメンバーによっ て構成される REFEDs において調査・議論がなされ ている。例えば Shibboleth の利用に直結する問題と して、ユーザインターフェースの問題が挙げられよ う。Shibboleth 認証へのリンクは各コンテンツのトッ プページに用意されることが一般的であるが、現在 のところ、その位置や表記方法はサービスごとに大 きく異なっている。より利用しやすいインターフェー スとなるように、一定のガイドラインを設けてベン ダーに推奨していくことが検討されている。複数の フェデレーションが共通して利用するものであるこ とから、どのような配置であれば利便性が高まるか、 また、どのように各ベンダーへ働きかけていくか、 REFEDs において議論されているところである。 6. おわりに  IP アドレス認証はユーザが特段の操作を要さず、 簡便にリソースを利用できることが最大の特長であ る。しかしその認可判断の基準は「アクセス発生源 が特定のネットワークである」という、いわば「物 理的な場所に基づいた」判断に限られる。VPN やリ バースプロキシを使った場合でも、ベンダー側で認 可を判断する基準が IP アドレスになる点は同じであ る。これに対して Shibboleth は、アクセスする利用 者の「属性に基づいた」認可判断が可能であり、誰が、 どのコンテンツにアクセスが可能なのか、細かなア クセス管理を可能とするものである。また、ベンダー に利用者データを登録してユーザ ID /パスワードを 発行する形式の認証とは異なり、利用者データとそ の属性を機関側で管理できることから、個人情報の 保護にも資する。  Shibboleth 認 証 は 幅 広 い 可 能 性 と 高 い 利 便 性 を 有する認証方式であるが、そのポテンシャルを最大 限 に 享 受 す る た め に は、 対 応 サ ー ビ ス の 増 加 が 何 よりも重要である。その一方で、多くのベンダーを GakuNin に呼び込むためには、利用機関の増加も必 須である。より多くの利用者に Shibboleth の利便性 を体感していただけるように、GakuNin の更なる充 実にご協力を賜れれば幸いである。 (千葉大学附属図書館:野田英明) (東京大学情報基盤センター:吉田幸苗) (京都大学附属図書館:井上敏宏) (九州大学情報システム部:片岡 真) (国立情報学研究所学術基盤推進部:阿蘓品治夫)

( 1 )NISO SERU Working Group. SERU: A Shared Electronic Resource Understanding . National Information Standards Organization.   http://www.niso.org/publications/rp/RP-7-2008.pdf, (accessed 2011-01-21). ( 2 ) PC にインストールしたソフトウェアを使って拠点の LAN に接続し、ネットワーク通信を仮想的にキャンパス内の環 境にするもの。 ( 3 )キャンパス内に設置したサーバが PC からのアクセス要求 を中継することによって、キャンパス内からのアクセスで あるかのように装うことができるようにするもの。 ( 4 ) EZproxy . OCLC.   http://www.oclc.org/ezproxy/, (accessed 2011-01-21). ( 5 ) Shibboleth . Internet2.   http://shibboleth.internet2.edu/, (accessed 2011-01-21). ( 6 ) 学術認証フェデレーション .   http://www.gakunin.jp/, (参照 2011-01-21).

( 7 ) Internet2. http://www.internet2.edu/, (accessed 2011-01-21).

( 8 )「IdP」「SP」はサーバを意味する場合もあれば、それらのサー バを設置している主体を意味する場合もある。本稿では特 に明記のない限りは、 サーバを示すものとする。

( 9 ) InCommon Identity and Access Management.

  http://www.incommonfederation.org/, (accessed 2011-01-21].

(10)UK Access Management Federation for Research and Education.

  http://www.ukfederation.org.uk/, (accessed 2011-01-21). (11) R E F E D s : R e s e a r c h a n d E d u c a t i o n F e d e r a t i o n s .

Trans-European Research and Education Networking Association.   http://www.terena.org/activities/refeds/, (accessed 2011-01-21). (12) Federations . REFEDs. 2010-10-22.   https://refeds.terena.org/index.php/Federations, (accessed 2011-01-21). (13)原則として IdP 数なので一つの団体で複数の IdP を立ち上 げているところはそれらもカウントしている。また、一部 SP 数やテスト段階も含む。 (14) 平成 20 年シングルサインオン実証実験報告書 . 国立情報

(7)

学研究所 . 2009-04-20.   https://www.gakunin.jp/docs/open/fed/6, (accessed 2010-02-10). (15)伊東栄典ほか . Shibboleth 認証基盤構築と学術認証フェ デ レ ー シ ョ ン へ の 参 加 : 今 後 の e リ ソ ー ス サ ー ビ ス 基 盤にむけて . 九州大学附属図書館研究開発室年報 . 2010, 2009/2010, p. 11-15. (16) SWITCHaai . SWITCH.   http://www.switch.ch/aai/index.html, (accessed 2011-01-21). (17)WAYF.     h t t p s : / / w w w . w a y f . d k / w a y f w e b / f r o n t p a g e . h t m l , (accessed 2011-01-21).

(18) The federation Éducation-Recherche . GIP RENATER.   https://federation.renater.fr/en/index, (accessed

2011-01-21).

(19)Marsh, Sara et al. Identity and Access as a UK Priority .   https://sites.google.com/site/jiscfam/documents/Ide ntityandAccessasaUKPriorityv5.pptx?attredirects=0, (accessed 2011-02-07). (20) InC-Library . Internet2.   https://spaces.internet2.edu/display/inclibrary/InC-Library, (accessed 2011-01-21). (21)松平拓也ほか . 特集 , 多様な価値を創出する情報システム : 大学における Shibboleth を利用した統合認証基盤の構築 . 情報処理学会論文誌 . 2011, 52(2), p. 703-713. (22)大谷誠ほか . シングルサインオンに対応したネットワーク 利用者認証システムの開発 . 情報処理学会論文誌 . 2010, 51 (3), p. 1031-1039. (23) e-Knowledge コンソーシアム四国 .   http://www-ek4.cc.kagawa-u.ac.jp/, (参照 2011-01-21). (24)eduGAIN. http://www.edugain.org/, (accessed

2011-01-21).

CA1737 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

米国の図書館就職事情

はじめに   米 国 図 書 館 界 で は 1990 年 代 の 終 わ り こ ろ か ら、 2010 年以降に起こるベビー・ブーマーの大量退職で、 図書館界が人材不足に陥るのではないかと危惧され てきた(CA1583 参照)。米国のベビー・ブーマーと は 1946 年から 1964 年に生まれた約 7,800 万人の人た ちを指し(1)、彼らの多くは今後 20 年内に退職すると 言われていたためである(2)。ところが、ベビー・ブー マーの最年長が 65 歳を迎えた 2011 年現在のところ、 米国で図書館員が不足するとの「 」は神話にとど まっているように思われる。 ベビー・ブーマー大量退職による図書館員不足の懸念  米国図書館協会(ALA)の会員を対象とした図書 館員人口調査には 2010 年 5 月までに約 5 万 4 千人が 回答し、その内 46.2%がベビー・ブーマー世代であっ た(3) 。業界人口の約半数が今後 20 年以内の内に次々 と 65 歳を迎える図書館界で、退職者の穴埋めをどう するか懸念するのは自然な事である。  ベビー・ブーマー大量退職による図書館員不足の 懸念を示した例を時系列に幾つか紹介する。  1995 年には、学術図書館員の人口統計学的研究で 著名なワイルダー(Stanley J. Wilder)が、1995 年 時点での北米研究図書館協会(ARL)加盟館の図書 館員がいつ退職時期を迎えるかを調査し、退職者の 割合が年々増えていくことを予想した(4)(表参照)。  時間は少し進んで 2002 年には American Libraries 誌でも、1990 年の人口調査で職業を「ライブラリアン」 と申告した者が 65 歳に達する時期をまとめ、2010 年 ‒2014 年がピークで申告者の 20%強が退職すると予 想した(5)。2004 年になると ALA は 2000 年度の人口 調査の結果を受け、図のとおり、2010 年から 2019 年 の間に 65 歳を迎える図書館員が増える事で大量退職 の波が来る事を提示し、再度図書館員不足の懸念を 表 1995 年時点で在職している学術図書館員の 予想される退職時期 予想される退職時期  割  合 1995 年から 2000 年   16% 2000 年から 2005 年   16% 2005 年から 2010 年   24% 2010 年から 2020 年   27% 出典:(4)を基に筆者が作成 図 2000年度の人口調査結果に基づくライブラリアンの65歳人口の推移予想        出典:(6)を基に筆者が作成

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年号

(8)

示した(6)。  このような図書館員不足という将来への危惧を受 け、2001 年以降、図書館員の確保・養成を援助する 動きも強まっていった。  2002 年 2 月 に は、 ロ ー ラ・ ブ ッ シ ュ 大 統 領 夫 人 (当時)の発案により、米国博物館・図書館サービス 機 構(Institute of Museum and Library Services: IMLS)が「21 世紀図書館員募集・訓練プログラム」 (Recruiting and Educating Librarians for the 21st Century)を開始し、次世代の図書館員の募集と教 育に力を入れ始めた(7) 。また、同氏の働きにより、 2003 年度の政府予算には図書館員養成のための 1,000 万ドルが盛り込まれることとなった(8)。 大量退職も大量募集も起こらない  しかし、こうした危惧は 2011 年を迎えた現在のと ころ、杞憂にとどまっていると思われる。ベビー・ブー マーの大量退職も図書館員不足も起こっていない、 もしくは遅れている要因としては次の事が考えられ る。  第一に、ベビー・ブーマー達が退職時期を先送り している事が考えられる。リーマンショック後すぐ の 2008 年 9 月 22 日 発 行 の Wall Street Journal 紙 には、何百万人もの退職年齢層が不動産や株価の下 落で退職を先送りしているという記事があった(9)。 2009 年の Wall Street Journal 紙のアンケートでは、 50 歳以上の回答者の 44%が 3 年かそれ以上退職を延 期すると答えている(10)。2010 年には米国の非営利調 査機関 Pew Research Center が、50 歳から 61 歳ま での 60%の人々が不景気を理由に退職を遅らせるこ とになりそうだと答えたとの調査結果を発表してい る(11)。

 米国では、「雇用における年齢差別禁止法」(Age Discrimination in Employment Act of 1967) で 一 部の職種を除き、定年設定は違法とされており(12) 、 図書館員も退職時期を自分の裁量で決められる。こ のため、年齢ごとの図書館員グループが一定の年齢 に達する年とその人数を割り出したところで、退職 者数を予測するのは難しい。前述した図書館員不足 の懸念を示した例に疑問が残るのはこのせいである。  第二の要因としては、図書館の組織運営の合理化 が挙げられる。たとえば外部委託が盛んであるし、 退職者が出て欠員となった空席も、新規雇用は行わ れず残った職員に兼任させることがしばしば見受け られる。また大学図書館相互間の協力も各分野で盛 んになってきている(13) 。下記に挙げるのは、日本研 究分野(14) における大学図書館相互間協力の例である。  イリノイ大学で日本研究コレクションの担当をし ている図書館員は、2010 年 8 月から、ウィスコシン 大学とミネソタ大学での業務の兼任を始めた(15) 。拠 点のあるイリノイ大学 50%、他の大学 25%ずつの割 合で選書やレファレンス・サービスを提供し、拠点 外の研究者に対してはメールやテレビ電話で対応す る。また、年に 3 度、1 週間ずつ各大学に訪問し、現 地でのワークショップなどを計画しているとのこと であった。  アリゾナ大学の日本学研究司書の話によると、こ の司書も 2010 年 10 月からアリゾナ州立大学の日本 研究コレクションを掛け持ちで担当している。アリ ゾナ州立大学では 2 年ほど前に日本学研究司書が離 職して以来、経済的な事情により後任を採用できな いため、今回のサービス共有を導入した。  マサチューセッツ大学アマースト校の日本研究司 書も、6 年程前から一人で、同州にあるスミス・カ レッジ及びアマースト大学の日本語コレクションへ のサービスも提供しており、購買、目録作成、レファ レンス、図書館教育(library instruction)などを担 当しているそうだ。  以上のことを考慮すると、そもそも大量退職は起 こっておらず、退職者が出てもそのポストに対して 必ず募集が出るとも限らないというのが現状である。 余る新卒者  大量退職も起こらない上に、組織の合理化で新規 雇用も見込まれず、更に不況による人員削減が行わ れている(16)図書館界での就職状況は、新卒者には特 に厳しい。2009 年の図書館情報学修士号(MLIS)取 得者の就職状況をまとめたレポート(17) によると、就 職率(フルタイム)は前年比で 69.8%から 72.9%へ と かに回復しているが、リーマンショック以前の 2007 年の数字(89.2%)には程遠い。こうした厳し い就職市場で生き残るために、筆者がライブラリー スクールや先輩図書館員から受けたアドバイスには 次のようなものがある。  第一に図書館員になる事を決めたらすぐにでも、 図書館員の求人情報を隅々まで網羅することである。 インターネットで簡単に手に入り、それを見れば雇 用市場の傾向を知る事ができるので、ライブラリー スクール選びや、授業の取り方、インターン先を計 画する上でも有用である。  第二に、卒業以前に図書館業務経験を積む事であ る。求人情報を調べ始めて気付くのは新卒者が応募 できる職の少なさである。新卒者が応募できるエン トリー・レベル職(18) でも、2 ∼ 3 年の経験を求めら れる事が多い。2006 年 4 月から 2009 年 5 月に掲載さ れた図書館員求人広告を調査した研究によると、1,042

(9)

件の求人広告の内、30.9%が少なくとも 1 年の図書 館業務経験必須と明記していた(19) 。中でも求められ る経験は目録作成やメタデータ付与等のテクニカル サービス、レファレンス、そして情報リテラシー教 育の分野だという。このため、ライブラリースクー ル を 卒 業 す る ま で に 図 書 館 で の ア ル バ イ ト や イ ン ターンシップ等でこうした分野での経験を重ねるこ とが重要である。そのほか、ライブラリースクール の授業では地域の図書館を舞台にしたプロジェクト も課されるので、そうした機会も、将来就きたい仕 事に関連させるなどして、賢く使うのがよいようで ある。このように早い段階から目的意識を持って行 動することで、自分のキャリアに必要な専門知識の 理解・習得、幅広い人脈の構築が可能となり、他の 求職者との差別化ができる。  第三に、図書館情報学以外のスキルを身に付ける ことである。上述のとおり組織運営の合理化が進ん でいるので、複数のスキルを持って多様な仕事に取 り組める人材が重宝される。たとえば教員の資格と 図書館情報学修士号を両方とも取得した人は、情報 リテラシー授業で教えるスキルが求められる学術図 書館員の職で強みを発揮できるだろう。米国の東ア ジア学系の図書館では 1 人の図書館員が複数の分野 (韓国学と日本学など)を掛け持ちで担当することも ある。こうした職に就くには、それらの分野を担当 できるだけの専門分野の学位取得、学術的バックグ ラウンド、言語知識を兼ね備えておく必要がある。 就職活動体験談  ここからは筆者が 2009 年 1 月に日本学研究司書の 職に就くまでの体験をもとに、米国学術図書館への 就職のプロセスについて紹介したい。  筆者の通ったプロセスも一般的な学術図書館職の 場合と同様、応募、電話面接、キャンパスビジット の 3 段階であった。  米国での図書館での仕事探しの情報源は豊富(20)で あるが、特に ALA(21)や ARL(22)、州ごとの図書館組 織のウェブサイト、また学術図書館であれば学会組 織からの情報や Chronicle of Higher Education 誌の 情報(23)等が有用であった。東アジア学系の図書館の 求人情報は東アジア学系の図書館に関するメーリン グリスト(24) から情報を得られる。応募時は大学の人 事のページからオンラインフォームと履歴書、カバー レター(25)を提出した。以前働いていた米国内の図書 館の上司やライブラリースクールのアドバイザーら 推薦者 3 人からは推薦書を直接応募先の人事宛てに 送ってもらった。  応募から約 1 か月半で電話面接の通知があった。 電話面接は、電話会議方式で、選考メンバー 4 人と 話すこととなった。このときの選考メンバーが書類 審査から採用通知までを担当していた。面接で質問 されたのは、「なぜ応募したのか」「仕事内容で何に 一番自信を持って取り組めるか」「何が一番自信のな い分野か」「なぜ自分こそが採用されるべきだと思う か」等であった。  電話面接を通過すると 2 日間のキャンパスビジッ トに招待された。一日目は大学図書館ツアーと選考 メンバーとの面接ディナーだった。選考メンバーと の食事というのは、どの業界の最終選考でも行われ るようで、大学のキャリアセンターも就職活動中の 学生向けに「面接ディナー」のワークショップを催 し、力を入れていた。筆者もそのワークショップに 参加していた。ワークショップでは、「ディナーで注 文すべきでないメニュー」から、「話題の選び方」「ド レスコード」「アルコールは飲むべきか」まで、コー スディナーを食べながら「面接ディナー」の対策を 学んだ。キャンパスビジットの二日目は、ほぼ一日 中面接であった。選考メンバーをはじめ、図書館長、 副館長、その後共に働くことになる他の研究分野司 書、関係部門スタッフ、そして日本研究の教授など との面接が続いた。面接の合間には、図書館スタッ フを前に 20 分間のプレゼンテーションを行った。プ レゼンテーションでは事前に指定されていたテーマ の日本研究専攻者向けの図書館教育に関して、学部 生と院生それぞれを対象とした場合の指導の違いに ついて話した。応募から採用通知をもらうまでの時 間は 4 か月であった。 おわりに

 米国労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics) が 発 行 す る『 職 業 ハ ン ド ブ ッ ク 』(Occupational Outlook Handbook) の 2010‒11 年 版 の「 図 書 館 員 」 の項には「この先 10 年で大量退職が見込まれている ため、就職機会の見通しは明るい」(26)と書かれている。 筆者もライブラリースクール入学時(2007 年秋)か らベビー・ブーマーの大量退職により図書館員不足 が起こるとの を其処此処で聞いていた。しかし本 稿を執筆する機会を得て、少なくとも現在のところ、 図書館員不足は起こっていない事が分かった。図書 館員不足の問題はこのまま杞憂に終わるのか、単に 延期されているだけなのかを知るには、もう少し時 間の経過を待って観察しなくてはならないようだ。 (ワシントン大学セントルイス東アジア図書館:田中あずさ) ( 1 ) 2010 年 の 統 計 で は 米 国 総 人 口 は 3 億 800 万 人 あ ま り (308,745,538 人)であった。

(10)

  http://2010.census.gov/2010census/data/apportionment-pop-text.php, (accessed 2011-02-08).

(2) Marshall, Joanne Gard et al. Where will they be in the future? Implementing a model for ongoing career tracking of library and information science graduates. Library Trends. 2009, 58(2), p. 301-315.

( 3 ) ALA Demographic Studies . American Library Association. 2010-06-04.

   h t t p : / / w w w . a l a . o r g / a l a / r e s e a r c h / i n i t i a t i v e s / membershipsurveys/ALA_Demographic_Studies_6_1_10. pdf, (accessed 2011-02-03).

( 4 ) Wilder, Stanley J. The Age Demographics of Academic Librarians: A Professional Apart. New York, Haworth Information Press, 1999, p. 35.

( 5 )Lynch, Mary Jo. Reaching 65: Lots of librarians will be there soon. American Libraries. 2002, 33(3), p. 55-56. ( 6 )Davis, Denise M. Library Retirements: What we can

expect . American Library Association.

  http://www.ala.org/ala/research/librarystaffstats/ recruitment/lisgradspositionsandretirements_rev1.pdf, (accessed 2011-02-07).

( 7 )Van Fleet, Connie et al. O librarian, where art thou?. Reference & Services Quarterly. 2002, 41(3), p. 215-217. ( 8 ) Lau, Debra. First Lady unveils $10 million plan to recruit

librarians. School Library Journal. 2002, 48(2), p. 20-21. ( 9 )Greene, Kelly. Baby boomers delay retirement. Wall

Street Journal. 2008-09-22, A4.

  http://online.wsj.com/article/SB122204345024061453.html, (accessed 2010-12-17).

(10)Greene, Kelly et al. Delayed retirements are boon and bane for fi rms. Wall Street Journal. 2009-07-13, B4.   http://online.wsj.com/article/SB124744102811929845.html,

(accessed 2010-12-17).

(11)Pew Research Center. How the Great Recession Has Changed Life in America . Social & Demographic Trends. 2010-06-30.

  http://pewsocialtrends.org/2010/06/30/how-the-great-recession-has-changed-life-in-america/1/, (accessed 2010-12-17).

(12)Neumark, David. The Age Discrimination in Employment Act and the challenge of population aging. Research on Aging. 2009, 31(1), p. 41-68.

(13)Pitchard, Sarah M. Crisis and opportunities. Portal: Libraries and the Academy. 2009, 9(4), p. 437-440. (14)東亜図書館協会(CEAL)の統計によると 2009 年度現在 51

の東アジア図書館に日本語のコレクションがある。   Council on East Asian Libraries Statistics.

  http://www.lib.ku.edu/ceal/php/, (accessed 2011-01-12). (15)Committee on Institutional Cooperation. Three CIC

Universities say Konnichiwa to Japanese Studies Librarian . CIC eNews. 2010-12-10.

  http://info.cic.net/eNews/Article.aspx?List=e2b955aa-f9d6-4598-bb25-be534d3192b8&ID=43, (accessed 2011-01-12). (16)Library Journal 誌のアンケート調査に参加した公立図書館

の 43%が 2010 年度に人材削減をしたと答えた。

  Kelley, Michael. Bottoming out: Severe cuts today put big question marks on the future. Library Journal. 2011, 136(1), p. 28-31.

(17)Maatta, Stephanie L. Stagnant salaries, rising unemployment. Library Journal. 2010, 135(17), p. 22-29.

(18)新卒者が入って初めて就く職務、初級職務。本来は専門学 位とインターンなどの かな経験のみで就けるはずの職務 である。

(19)Reeves, Robert K. et al. Job advertisements for recent g r a d u a t e s : A d v i s i n g , c u r r i c u l u m , a n d j o b - s e e k i n g implications. Journal of Education for Library and Information Science. 2010, 51(2), p. 103-119.

(20)例えば、以下の文献に求人探しに役立つサイトのリストが 載っている。

  Eberhart, George M. ed. Guide to library placement sources . The Whole Library Handbook 4 : Current Data, Professional Advice, and Curiosa about Libraries and Library Services. How Many People Work in Libraries? Chicago, American Library Association, 2006, p. 82-86. (21) Employment . American Library Association.

  http://ala.org/ala/educationcareers/employment/index. cfm, (accessed 2011-01-17).

(22) Career Resources: Jobs, Residencies, Other Opportunities .   http://www.arl.org/resources/careers/index.shtml,

(accessed 2011-01-17).

(23) Global Jobs . The Chronicle of Higher Education.

  http://chronicle.com/section/Global-Jobs/434/, (accessed 2011-01-17).

(24) Eastlib, the Listserv for East Asian Librarians Council on East Asian Libraries.

  http://www.eastasianlib.org/Eastlibinstructions.htm, (accessed 2011-02-08).

(25)履歴書送付状のこと。履歴書とは別に、応募経緯、志望理 由、意欲、長所や経験等自分を文章でアピールするもので、 履歴書のサポートの役目を果たす。

(26)U.S. Department of Labor, Bureau of Labor Statistics. Librarians . Occupational Outlook Handbook. 2010-11 Edition, 2010, p. 270-273.   http://www.bls.gov/oco/ocos068.htm, (accessed 2010-11-24).

CA1738 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

ニュージーランド国立図書館の

デジタル文化遺産アーカイブプロジェクト

1. はじめに  デジタル社会の進展により、これまでは紙で出版 されていたものが、徐々に電子媒体にシフトしてい る。また、紙の資料のデジタル化も盛んに行われ、 国立国会図書館でも現在、大規模なデジタル化作業 が進行中である。  これらのデジタル資料を今後どのように保存し、 そして永続的なアクセスをどのように保証するのか、 これが大きな問題となっている。そこで、2004 年か ら先駆的な取り組みを行っているニュージーランド 国立図書館の「デジタル文化遺産アーカイブプロジェ クト」(National Digital Heritage Archive Project; 以下、NDHA とする。)を紹介する。

2. プロジェクトの経緯

  ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド で は 2003 年 に 国 立 図 書 館 法 (National Library of New Zealand Act) が 改 正 さ れ、国立図書館は紙の資料に加えてデジタル資料の 収集・保存・提供を行うこととなり、CD や DVD、ウェ ブサイト等のデジタル資料も法定納本制度の対象と なった(1) 。そこで国立図書館はデジタル資料を収集 して格納し、永続的に提供する仕組みを構築する必 要があった。  国立図書館では、2000 年から電子情報の保存につ いて調査を開始していた。上記の法改正に伴い、国立 図書館は 2004 年に NDHA を立ち上げ、デジタル資 料をアーカイブして永続的に保存し、提供するシス テムの構築及び電子情報保存のマネジメント手法の 確立を目的としてプロジェクトを開始した。このプ ロジェクトには 2,400 万 NZ ドルの予算がつけられ(2)、 システムの構築には NDHA が Ex Libris 社及び Sun Microsystems 社と共同で作業に当たった。また、構 築するシステムが「文化遺産の保存」という目的に合 致したものに仕上がるよう監視するため、デジタル

(11)

アーカイブに関する経験・知識を有する海外の機関の 職員からなる Peer Review Group(3)

を組織した。  まずは 2008 年にデジタル資料の収集及び提供のシ ステムの基本機能が完成した(Phase1)。2010 年に は長期保存のためのマネジメント機能を追加し、す べての機能が完成して運用されている(Phase2)。 3. NDHA で構築した電子情報保存システム  NDHA の 電 子 情 報 保 存 シ ス テ ム は 国 際 標 準 に 準 拠することを前提として構築されたため、ISO の標 準 規 格 で あ る Open Archival Information System (OAIS)の参照モデル(CA1489 参照)に準拠している。 以下では電子情報保存システムの持つ機能を簡単に 紹介する(4) 。 (1)収集  CD や DVD、デジタル画像等の収集については、 システムにデータを登録するために Web Deposit Tool が開発され、出版社や個人が自ら出版物を電 子的に納本できるようになった。ウェブサイトの収 集 に つ い て は、 Web Curator Tool が 英 国 図 書 館 (British Library)と共同で開発された。集められた ウェブサイトから、 INDIGO というツールを用い て PDF 等のファイルを抽出し、それらをシステムに 保存することも可能である。また、デジタル資料の ヘッダー情報等から自動的にメタデータを抽出する Metadata Extraction Tool も 開 発 さ れ て い る。 こ れらのツールを用いてデジタル資料等は収集される。 また、これらのツールはオープンソースとして広く 公開されている。 (2)保存  収集されたデジタル資料は、基本的に受け入れた 時のフォーマットでシステムに格納される(4) 。格納 と同時に、アクセス用のファイルが自動的に生成さ れる。  また、格納したコンテンツを永続的に保存するた めに、システムでは各ファイルのフォーマットの陳 腐化を検知し、マイグレーションを行うことができ る機能を備えている(6)。 (3)提供  (2)で保存された際に生成されるアクセス用ファ イルは、国立図書館の代表的な以下のウェブサイト より利用することができる。 ① Papers Past(7)  ニュージーランドで 1839 年から 1945 年に発行さ れた新聞 61 紙の 100 万ページ以上の画像データ及び テキストデータが閲覧できる。 ② Timeframes(8)  国立図書館の所蔵する、ニュージーランドの地理 や歴史、日常生活等を描写した資料をデジタル化し た、約 7 万件の画像データを閲覧できる。 ③ Matapihi(9)  ニュージーランド国内の図書館や美術館、文書館 等 16 の機関が所蔵している、図書や絵画、映像等を デジタル化した約 24 万件の画像データを横断的に検 索し、閲覧できる。 4. 最後に  ニュージーランド政府は 2007 年に Digital Strategy 2.0(10) を策定し、国としての情報通信技術の枠組みを 示している。国立図書館はその中でも中心的な役割を 果たすこととなっており、NDHA によりデジタル情 報の収集、保存及び提供を行うことで、この枠組みの 中で大きく貢献することになるであろう。 (関西館電子図書館課:岡本常将)

( 1 ) NDHA Programme . National Library of New Zealand.   http://www.natlib.govt.nz/about-us/current-initiatives/

ndha/past-initiatives/ndha-programme, (accessed 2011-01-14).

( 2 ) Speech to the launch of phase 2 of the National Digital Heritage Archive . Official Website of the New Zealand Government.   http://www.beehive.govt.nz/speech/speech-launch-phase-2-national-digital-heritage-archive, (accessed 2011-01-14). ( 3 )英国図書館、コーネル大学図書館、ゲティ研究機構、フィ ンランド国立図書館、オランダ王立図書館、中国国家図書館、 シンガポール国立図書館、グラスゴー大学、イェール大学 の 9 機関であった。

  Sun Microsystems. Sun Microsystems Case Study: Digital Preservation at the National Library of New Zealand . National Library of New Zealand. 2008-05-30.

  http://www.natlib.govt.nz/downloads/Sun-Case-Study-May-2008.pdf, (accessed 2011-01-14).

( 4 )McKinney, Peter et al. Digital preservation in capable hands: Taking control of risk assessment at the National Library of New Zealand. Information Standards Quarterly. 2010, 22(2), p. 41-44.

  http://ndha-wiki.natlib.govt.nz/ndha/attach/Reading Resources/IP_DeVorsey_McKinney__Risk_Assessment_ isqv22no2.pdf, (accessed 2011-01-14).

( 5 ) Digital Preservation At The National Library . National Digital Heritage Archive.

  http://ndha-wiki.natlib.govt.nz/ndha/pages/DigitalPreser vationAtTheNationalLibrary, (accessed 2011-01-14). ( 6 )Ex Libris 社と共同で開発した Rosetta を採用している。詳

細は下記参照のこと。

   A New Way of Preserving Cultural Heritage and Cumulative Knowledge . Ex Libris.

  http://www.exlibrisgroup.com/category/RosettaOverview, (accessed 2011-01-14).

( 7 ) Papers Past.

  http://www.paperspast.natlib.govt.nz/cgi-bin/paperspast, (accessed 2011-01-14).

( 8 ) Timeframes . National Library of New Zealand.   http://find.natlib.govt.nz/primo_library/libweb/action/

search.do, (accessed 2011-01-14).

( 9 )Matapihi. http://www.matapihi.org.nz/, (accessed 2011-01-14).

(10) Digital Strategy 2.0 . Ministry of Economic Development.   http://www.med.govt.nz/templates/StandardSummary___

(12)

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トルコの司書職制と図書館情報学教育

1. はじめに  2010 年 12 月 10 日、 ト ル コ 共 和 国『 官 報 』(T.C. Resmî Gazete)第 27781 号に、次のような閣議決定 が掲載された。 民俗調査官、司書、文書館員、資料保存専門職およ び社会学専門職の「官職」は、国家公務員法第 36 条第 1 項第 2 号に規定する「技術職」であるものと する(1)  この閣議決定は、トルコの司書職制と図書館員養 成の歴史において少なからぬ意味をもつものである。 本稿では、この決定を手がかりにトルコの司書職制 と図書館情報学教育の現状について紹介する。 2. トルコにおける図書館情報学教育  トルコでは、図書館情報学の研究教育を行う大学 組織は、アーカイブズ学の研究教育を行うものと合 わせて「情報・記録管理学科」の名称で統一されて おり、現在この学科に学生を受け入れている大学は トルコ国内に 5 つ存在する。この名称に変更された のは 2002 年であり、それまでは主に「図書館学科」 と呼ばれていた。  図書館情報学教育において最も長い歴史を持つの は、トルコの首都にあるアンカラ大学で、初代国立 図書館長ウテュケン(Adnan Ötüken)(2)の協力によっ て 1942 年に始められた図書館教室を前身とする。こ の教室が、1954 年に米国のフォード財団からの援助 を受けて米国人教員を迎え、歴史言語地理学部図書 館学科となった(3)。  次に古いものはイスタンブル大学で、1964 年に教 員をドイツから招いて文学部に図書館学科を創設し た(4)。  第三はアンカラのハジェッテペ大学文学部のもの で、1974 年から学生を受け入れている。ここは英語 教育を重視したカリキュラムを特色に掲げている(5) 。  1980 年代以降、研究教育の充実とともに 3 大学の 図書館学科は拡大し、アンカラ大学とハジェッテペ 大学ではアーカイブズ学専攻、ドキュメンテーショ ン・情報学専攻が増設された(6) 。1990 年代には、情 報化社会に対応して図書館学科の教育目的は図書館 に限定されない情報専門職の養成へと発展し(7)、こ の目的の下で図書館学科は情報・記録管理学科に改 組された(8) 。2002 年以降、3 大学の情報・記録管理 学科では、学生は専攻の枠を超えて学ぶことができ るようになっている。  2008 年にはエルズルムにあるアタテュルク大学文 学部情報・記録管理学科が学生の受け入れを開始し、 図書館情報学教育機関に加わった(9)。このほか、イ スタンブルのマルマラ大学文理学部に 2002 年にアー カイブズ学科から改組された情報・記録管理学科が あり、アーカイブズ学を中心とする研究教育が行わ れている。 3. 司書の専門職制  トルコでは、大学の情報・記録管理学科で教育を 受け、4 年の学部課程を修了した者が司書有資格者と みなされる。情報・記録管理学科を修了していない 者は、図書館で働いていても司書(kütüphaneci)の 職名で呼ばれることはない。  トルコは全国 81 県 894 郡に配置された 1,135 館の 公共図書館(10)が文化観光省の地方出先機関で、大学 も約 3 分の 2 が国立なので、司書の職場のうち多く の割合を政府機関が占める国である。これら政府機 関の図書館では、司書の官職に就くことができる者 は、情報・記録管理学科の修了者に限られている。  トルコの公務員制度では、新規採用者は、全国の 官公庁が参加して毎年数回に分けて実施される採用 プログラムで決定される(11)。すべての募集対象官職 は、学歴などの申込資格が厳格に定められており、 司書の官職は、大学の情報・記録管理学科を修了し ていないと採用を希望することさえできない仕組み になっている(12)。  民間でも同様で、司書という語は情報・記録管理 学科を修了している図書館職員を指し、情報・記録 管理学科を修了していない職員との区分が見られる。 4. 司書の教育・人事の課題  これまで見てきたようにトルコでは、大学におけ る情報・記録管理学科修了の資格が司書の人事制度 において実効のある前提として機能しているが、図 書館関係者の間では、まだ多くの課題があると考え られている(13) 。  まず、司書として職を得ることが困難である。トル コの図書館では、従来職員の大部分が一般事務系の官 職で占められてきたため、図書館の数に対して司書の 求人は少なく、公共図書館の場合、職員のうち司書有 資格者の割合は依然として 15%に満たない(14) 。  また、公務員の採用プログラムでは、事前に実施 される公務員選抜試験の獲得点に基づいて採用者が 決定されるが、司書志望者に課せられる試験は歴史、 地理、政治、経済、外国語などの一般知識を問う内 容のみである(15)。そのため、政府機関で司書の官職

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